田辺市立大坊小学校

田辺市立大坊小学校

空撮1田辺市立大坊(おおぼう)小学校

所在地 田辺市芳養町3944番地

構造 木造一部鉄骨造2階建て

延床面積 1075㎡

設計   株式会社 堀田設計

施工   株式会社 山幸

今回は今年5月に新築落成式を終えました田辺市立大坊小学校を紹介したいと思います。

以前、青年委員会主催で工事中の見学会の模様を伝えて頂きましたが後編です。

和歌山市方面から阪和自動車道、南紀田辺ICを降りて左折R42白浜方面へ、すぐ最初の下り口を左折して北進しますと正面に大きな岩山が現れます。吉野熊野国立公園の一つでもある「ひき岩群」です。ゴトビキが並んでいるように見えることから名付けられたそうです。その背後にそびえる山が大坊小学校のある大坊地区です。山一面がミカン畑で無数の民家が点在している様はなんとも不思議で初めて見る者を驚かせます。石垣積のミカン畑と民家で集落が形成されているのです。和歌山でミカンと言えば有田なのでしょうが当地域では大坊ミカンが高級ブランドです。日当たり良好な南斜面と排水の良い段々畑を活かして高品質なミカン栽培が古くから行われてきました。ひき岩を過ぎると大坊地区への案内板に従い、急な坂道をクネクネとしばらく登り左折その山の中腹に小学校があるのです。石垣積段差のある敷地に建つ前校舎の老朽化による建て替え計画では昨今の少子化にもかかわらず、地域住民の熱意により木造での現地建て替え、新築が実現したのです。ほぼ全ての木材は田辺市内で調達し地域のシンボルとなるような校舎を目指しました。旧校舎を解体、グラウンドに建設された仮設校舎での授業では、児童たちは校舎に使われる木材についての勉強、課外授業では伐採現場や加工場の見学などを行い、日々隣で行われる建築工事をつぶさに観察しながら新校舎の完成を心待ちにしていました。関係者の計らいで工期を前倒し、この3月、美しい天井の木製立体トラスが映える多目的ホールでの卒業式が執り行われました。卒業生にとっては忘れられない日となった事でしょう。

空撮2 校舎は下段に2階建ての教室棟、上段には玄関、トイレ、平屋建ての多目的ホール、家庭科室棟があり、上下2棟を耐火構造の渡りローカで繋がれています。地域のコミュニティの場として上段棟だけの利用も視野にあるそうです。教室棟は海側に配置され眼下にひき岩群、田辺市街地が広がり、正面にはや白浜や太平洋が望める素晴らしい眺望です。

その分、風当たりも相当なものですが、昨年の台風21号では無被害だったそうです。

 内装は床、腰壁、家具に紀州桧複合材、小屋組みは木造トラス表しで、傾斜天井は開放感があり、ぬくもりの感じられる、とても明るい空間となっています。1階は保健室、職員室等が配置され天井高は控えめながら2階同様、明るく木に包まれた空間がひろがります。

 建物高さは裏山集落からの眺望を考慮し、なるべく低く計画されたそうです。

 

この素晴らしい学び舎に子供たちの元気な声がいつまでも響きわたり地域を元気づけ、益々発展し続けることを願いたいと思います。

 なお、秋にはミカンが色づき、あちこちで収穫が始まります。地域はせわしく、大勢の人が往来し活気に満ちた季節になります。当地域へお越しの際にはこの繁忙期の妨げにならないようにしたいものです。道路も狭い所が多いので小型車や2輪がお薦めです。

取材協力 田辺市建設部 建築課

  【会報誌きのくにR1年10月号掲載】

情報・出版委員 永田佳久

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