南海高野線 九度山駅舎

九度山駅舎

 

 今回は、伊都郡九度山町にある「九度山駅」を紹介します。

 南海電鉄高野線沿線の九度山駅は、国道 370号沿いに「幸村の里」の文字と「六文銭」が描かれた赤いのぼりが揚がる小高い緑豊かな丘にあります。白い板張りの外壁にうす紫色の柱のハーフティンバー様式の木造駅舎です。山小屋を思わせる大きな三角屋根は洋風でありながら和風の棟飾りが付いている所や、P5130234九度山の「度」の字に歴史を感じる駅名表示など細かな所に面白さを見つけられます。開業は1924年(大正 13)年12 月ですが、建築当時からの窓枠や壁面に据え付けられた木製のベンチなどは、現在も状態良く利用されています。そのベンチ足元には煉瓦が現れており、煉瓦造りの基礎だったと伺えます。下りの駅(高野山方面)では、駅周辺に大きな集落が形成されているのは九度山が最後です。ここから先は、本格的な急勾配が始まり車窓からの奥深い山の風景を味わうこと約30分で高野山という位置にあり、参詣鉄道の拠点の駅と言えます。

 駅南西(下り方面)には赤色の欄干が印象的な煉瓦橋梁があり、そこから展望デッキ付き列車「天空」が走る姿や駅ホームの様子が一望できます。上り(難波方面行)のホームには真田DSC05447幸村と十勇士のイラストを配した「九度山真田花壇」が設置され、利用者を楽しませてくれます。

 真田幸村ゆかりの地・九度山町では毎年 55 日頃に行われる「真田まつり」が有名です。関ヶ原の合戦の後、九度山の地で雌伏の時を送った真田昌幸・幸村父子を偲んで開催される祭です。武者行列のゴール地点となっている真田庵(善名称院)は、真田昌幸・幸村父子閑居生活を送ったとされる屋敷があった場所に建っています。片方が六文銭の紋、もう片方には菊の紋章が刻まれた門をくぐると、三層城閣風の本堂が目DSC05477に入ります。八つ棟造りの軒の瓦には菊花の紋章が入っており、よく見ると熨斗瓦には、菊丸瓦と輪違瓦が積まれていて(菊丸瓦と輪違瓦を組み合わせて積んだ棟を組棟と言います。)とても重厚な印象を受けました。境内には真田昌幸の墓や資料館もあり、春には九度山町の町花である牡丹が咲きます。

 また、駅周辺には「真田のみち」と掲げられた町の入口があり、町中心部の商店街へと続きます。商店のレトロな看板や古い家屋が数多く残る町並みだけではなく、真田十勇士が見え隠れする電柱や特産品である柿をかたどったユニークな街灯など、町歩きが楽しくなる工夫がされています。また、各家の軒P5130273先には紀州九度山の文字と六文銭のマークが入ったプランターが設置されていたり、戦国時代スタイルに扮した参加者が町なかを練り歩くコスプレイベントも行われているそうで、町全体が「幸村の里」として盛り上げていこう!という前向きな思いにとても好感を持ちました。

 【会報誌きのくにH25年6月号掲載】

情報・出版委員 三木早也佳

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