新宮市文化複合施設(丹鶴ホール)

新宮市文化複合施設(丹鶴ホール)

 

■構造・規模       鉄筋コンクリート造(1~3F)、鉄骨造(4F)

地上4階建て・耐震構造

■建築面積         2,959.61㎡

■延床面積         6,428.79㎡

■高  さ                約24.50m

■設計・監理       山下設計・金嶋共同企業体

■施工   《建築》   村本・三和 特定建設工事共同企業体

《電気》   勝山・新宮・椿本 特定建設工事共同企業体

《機械》   協和・中村 特定建設工事共同企業体

今回は新宮市の文化複合施設『丹鶴ホール』を紹介します。旧市民会館の老朽化による建て替えに伴い、小学校合併により廃校となった丹鶴小学校の敷地に文化ホール、図書館、熊野の歴史や自然の情報発信拠点としての熊野学エリアが一体となった新宮市の文化交流拠点となるべく建てられました。

計画当初はそれらを三つの建物として計画していたとの事ですが、敷地内で確認された遺跡の併存のため、1つの建物に3つを併設する複合施設となりました。敷地は熊野川を望む場所で新宮城跡に隣接し、建物はコンクリート打ち放しの箱をずらしながら積み上げた形が印象的で、縦スリットを入れたコンクリートの外壁は重厚感もありながらも全体として軽く、街にシンボリックな存在感を出しているように感じました。また、津波や災害に備え市民が外部から屋上へと上がる階段があり、避難施設としての役割も担っています。

建物は4階建てで、1階は文化ホール、2階は熊野学エリア、3階は機械室、4階に図書館となっており、文化ホールは801名を収容するプロセニアム形式のホールで、熊野の木立をイメージしたような木の柱が並ぶ空間は、全体として直線的でキリッとした印象を与え、洗練された落ち着いた雰囲気になっていました。1階の客席はすべて収納式になっていて、平土間としてイベントに合わせて多目的に使えるよう考えられています。

またホワイエの横には大階段と呼ばれるひな壇の様な階段があり、その形状を生かしたイベントを誘発するような仕掛けも設けられていました。

2階の熊野エリアは、建物中心に3層吹き抜けとなる文化ホールの外周を囲む様に配置され、熊野学研究室や熊野に関する展示パネルや映像が見られ、廊下状の熊野ギャラリーを歩きながら熊野の歴史や自然を学べる事が出来ます。

4階の図書館は外壁が全てガラス張りとなっており、明るく開放的で、学生や市民も多く利用されています。また、新宮市出身の芥川賞作家の中上健次の作品や写真を展示したコーナーも設けられていました。

図書館のどこからでも見晴らしが良く、山や熊野川の自然と新宮市街の街並を一望出来き、ここを訪れることで利用者は自分たちの街を眺め、再認識出来るといった意味でも有意義な場所に思えました。

これからこの丹鶴ホールが様々なイベントを通じ、市民と街の中心となる建物になってくれればと思います。

          【会報誌きのくにR4年7月号掲載】

 情報・出版委員 仮屋 亘

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