フラワーヒルミュージアム
フラワーヒルミュージアム
【建物概要】
面積 敷地面積6440㎡ 述べ床面積806㎡
構造 鉄筋コンクリート造
設計 株式会社黒川紀章建築都市設計事務所
着工~竣工 平成10年~平成11年
施工 栗本建設工業株会社
総工費 937,000千円(その他施設含む)
今回は、紀の川市にある『フラワーヒルミュージアム』を紹介します。場所は最近、道の駅になった青洲の里の中にあります。敷地の中には、華岡青洲が偉業を成し遂げた建物『春林軒』や市民が使える公園も併設されています。
建てられた目的は、医聖、華岡青洲の偉業を称えると共に、地元の野菜や果物を使用し、食育の町として推進して行くために複合施設が必要だった為だそうです。毎年4万人もの利用者があるそうで、目的をきっちり果たせてくれていますね。
今回のこの建物、なぜに黒川紀章氏がこの建物を担当してくれたのかなと思っていました。聞いたところ、黒川紀章氏の奥様、若尾文子さんが、有吉佐和子の名作『華岡青洲の妻』で妻・加恵を演じた縁でと聞きました。なるほど、納得。
この建物の形が独特で、上から見ると楕円状になっています。これは麻酔薬の主成分であるマンダラゲがモチーフになっているようです。これは、定かでは無いのですが、楕円といっても正確には扇型。その扇方の開口部分が、華岡青洲の生家、春林軒に向かってあいているようです。私の憶測ですが・・・。粋な黒川記章氏から華岡青洲へのオマージュなのかなと勝手に想像していました。
アプローチから水盤が張られた(現在、管理上水は流れていません)中庭を眺めながら、玄関に入っていきます。エントランスは楕円に沿った形になっており奥行きを感じます。一番奥には展示室があり、青洲ゆかりの様々な遺品が展示されています。この展示室は有料(大人600円、小人300円)で、『春林軒』と共に見ることが出来ます。ひとつ手前に来ると、多目的ホールがあります。この多目的ホールは一般に開放されていて、40人~60人収容可能です。さらに手前に来ると物品販売コーナー、その奥にこの建物の目玉といっていいくらいの部屋『レストラン華(48席テラス30席)』があります。形はやはり楕円で、南向きに大きく取られた採口と、高い天井で凄く開放的な空間で食事を楽しむことが出来ます。外にテラスも有り、気候のいい日は快適でしょうね。この『レストラン華』は地元の旬の食材が使われていて、凄くおいしいです。一度食べて見て下さい。
取材の最後に、このフラワーヒルミュージアムで長年勤務されている、木村さんに『ずばり、この建物の良さは?』と質問すると、木村さんは『建設されて長いですが、デザインに古さを感じない。光を多く取りいれたレストランもいい』とおっしゃっていました。私も全く同意見でした。私も地元の方に喜ばれる物を提供していきたいと思いました。取材の最後、改めて、竣工図をみて実物を見て帰ったわけですが、『これ、現場関係者、職人さんも大変だっただろううな』と思いがずっと頭から離れませんでした。施工者さんに拍手を送りたいと思います。
今年も10月30日は、『青洲祭り』というのが有り、色んな催しが行われます。
その日は那賀支部も木耐震事業でブースを出します。
皆様、一度訪れて見て下さい。施設一体がテーマパークになっています。
【会報紙きのくにH28年9月号掲載】
情報・出版委員 中谷隆志