田辺市消防庁舎

田辺市消防庁舎

【建物概要】04-H280225

■設計監理  ㈱岡本設計

■敷地面積  7082㎡(海抜40m)

■延床面積  2665㎡

■構造    鉄筋コンクリート造4階建て 免震構造

(本庁本体工事)

■建築工事 : 田中・日高特定建設工事共同企業体

■電気設備工事 : 岩本電気産業㈱

■機械設備工事 : ㈱武井工業所

(周辺整備工事)

■建築工事 : ㈱田中組

■電気設備工事 : ㈲光明電設

■機械設備工事 : ㈱武井工業所

■竣工    平成28年2月

 

 

今回は、南紀田辺ICを降り車を走らせること約5分。白浜温泉に向かっていると左手の山にある「たなべしょうぼう」を紹介します。

建てられた目的は、広範となった市域(田辺、白浜、上富田、すさみ4市町の119番通報を一括)の消防防災力の強化を目的に、大規模な地震・津波が和歌山県南部で発生しても、拠点機能を喪失することのないよう、建築位置を高台に移すとともに、最近の少子高齢化・人口減少社会への移行や建物構造・生活様式の多様化などによる社会環境の変化、また、温暖化の影響といわれる局地的な豪雨や台風の大型化などの自然環境の変化も相まって、災害自体が複雑多様化し、住民の安心・安全の確保のためには、なお一層の常備消防力の充実強化が必要と考え新消防署の建設となりました。30-H280225

田辺消防庁舎は、近い将来発生が危惧されている南海トラフ地震に対して『基礎免震構造』を採用しています。耐震構造と異なる点は、柱と基礎の間に『免震装置』を設置しています。免震装置は三種類(①鉛ダンパー入り積層ゴム-14基(積層ゴム:建物鉛直荷重支持、水平荷重を吸収、 鉛ダンパー:水平方向の揺れを減衰)、②すべり支承:14基(積層ゴム同様機能、建物の周期を伸ばす)、③オイルダンパー:4基(水平方向の揺れを減衰))を使用しており、免震構造の効果として、震度7を震度4程度(建物の応答加速度を1/4程度)に低減させることが可能です。

CIMG4630地震時、耐震建物では『ガタ、ガタ』と揺れますが、免震建物では『ユッサ、ユッサ』とゆっくり揺れ、構造体の損傷がないのは勿論、建物内部の什器、設備機器の移動、転倒を防止し、機能が保持されることより、震災後、直ちに施設の使用が可能であります

1階は、車庫、出勤準備室、救急消毒室など救急や火事などに備え、一刻も早く行動できるようになっている。

2階は、事務所フロアとなっており、通常業務を行うとともに、仮眠室も設置しています。

3階は、4市町の119番を一括にまとめる消防指令センター、大災害など発生した時に情報収集など緊急に対応する災害対策本部室を設置。また、「もしも」に備えて、一般の方にも利用できる煙体験室を設置し、火災時の煙の怖さを体験できることができます。

屋上は、訓練塔があり消防隊員が訓練を欠かさない。また自家用発電設備があり、停電時でも電力は確保でき、災害時に対応しています。

外部設備に目を向けますと、災害時の防災拠点として機能を確保するため、倉庫には様々な防災用品を備蓄している防災備蓄倉庫。

消防車両等の給油を行い、大規模な災害が発生した場合でも、円滑に燃料を確保することができる自家用給油施設。建物3棟(2階建て2棟、3階建て1棟)で、様々な街並みを自由に構成し、あらゆる災害を想定した消防訓練が実施できる街区訓練施設があります。

取材当日、小学生の見学体験をしていました。地域密着と共に、防災に対し教育することは大切なことだと思います。また消防隊員の皆様は、毎日万が一に備え、準備を怠らず精進しています。私たち建築家も、一般の方に住宅の耐震化を進めることで防災に対し、ご協力できるのではと感じました。

田辺周辺の安心・安全のため建築された田辺消防庁舎。この庁舎が活躍することのないことを期待したいです。

 

              【会報紙きのくにH28年11月号掲載】

 情報・出版委員 亀山 忍

 

 

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