海南市児童図書館
海南市児童図書館
建物概要
設計監理 海南市役所
施工 神出建設企業 株式会社
工法 RC造
建築面積 100.27㎡
延床面積 212.10㎡
竣工 昭和53年
海南市児童図書館は海南市の中心地にあり、海南市役所に隣接して建てられています。付近には商店街や医療施設、駅などもあり街の賑わい・活気が感じられます。
児童図書館と名のつく図書館は全国的に見ても2館しか存在しません。建物が設計・施工された昭和50年代前半は第二次ベビーブーム。いかに海南市が子供達の教育に熱心であったかがうかがえるかと思います。(「関西の出産・子育てにあたたかい街ランキング」で一位に輝いた実績もあるそうです)
東に面する道路から建物を望むと、2階部分の外壁が北と南に張り出しているのがわかります。このオーバーハングした壁は、高さ方向の真中を頂点とした三角の壁となっています。この壁に設けられた「じどうとしょかん」のサインが何ともやさしい印象を与えてくれます。このオーバーハングした壁は南北に設けられたカーテンウォール(一説では海南市で初めて導入された)を構成し、北面からはやさしく光を取りいれ、南面からは積極的に採光を取り入れるという、対照的な機能を果たしています。
内部に入ると来館者への配慮が感じられます。建物を支える柱の角は面取りをし、角当てクッションが施され、当然危ない段差はありません。ソファーや書棚は子供が使用し易い高さのものが配置され、案内板はひらがな表記で壁掛け時計は鳩時計です。階段下のスペースは赤ちゃんコーナーとなっており子育て世代のお母さん達が気軽に入館し、子育ての情報交換の場として利用されているそうです。
そして、特徴的な吹き抜け階段が上下の空間をつないでいます。この吹き抜け階段は、階段部分は屈曲し吹き抜け部分は曲線となっています。また、吹き抜けの壁面には所狭しと地域の児童が描いた絵が飾られています。どの絵も味があり足を止めて見てしまう力作ばかりです。この建物は当時の海南市職員(西中 哲泰氏)が設計し、施工は現海南市長(神出政巳氏)が担当されたそうです。また、この吹き抜け階段の施工には非常に苦慮されたと当時のエピソードもお聞きしました。
昭和53年7月に開館し今日まで地域の児童から高校生まで、幅広い年齢層の子供達が利用しています。館長にお聞きしたところ、年間の利用者数は約42,000人(1日平均200人)。この数字は、海南市下津図書館の利用者数(年間約43,000人)に匹敵するそうです。
今後は海南市役所の移転による庁舎後地整備計画に伴い、現在の児童図書館は取り壊され新たに市民交流施設が建設されることが決定しています。海南市児童図書館が40年近く築いてきた「出会いと情報交換の場」としての役目を継承し、子供から大人まで多くの人々が集う魅力と活気に溢れた施設となることを願います。
会報紙きのくにH28年12月号掲載】
情報・出版委員会 竹本憲司