和歌山城ホール(1)

和歌山城ホール(1)

エントランス(石垣風タイルと軒天の木ルーバー)

■構造・規模       鉄骨鉄筋コンクリート造

一部鉄骨造・鉄筋コンクリート造

地上5階建て一部地下1階

■建築面積         4,810.29㎡

■延床面積        14,110.10㎡

■高  さ               31.78m

■実施設計        教育施設・キューブ特定設計業務共同体

■工事監理・意図伝達業務 教育施設・キューブ特定監理業務共同体

■施工   《建築》   奥村・小池・宮井特定建設工事共同企業体

《電気》   八千代・植野電気特定建設工事共同企業体

《機械》   テクノ菱和・東和冷機特定建設工事共同企業体

■基本設計・基本計画   梓設計・環境建築計画共同企業体

■基本構想        株式会社 都市空間研究所

 

和歌山城ホールは、平成27年から基本構想が始まり、令和3年10月に開館しました。和歌山市立校として初の小中一貫校である伏虎義務教育学校が、旧城北公園に移転すると決まったためです。約13,000㎡ある旧伏虎中学校の敷地を等分する形で、北側は和歌山県立医科大学薬学部(令和3年4月開校)、南側は和歌山城ホールが立地しています。

初代市民会館は、昭和54年まで和歌山市七番丁(現在の市役所敷地)にあり、三代目としてこの地に帰ってきたこととなります。

基本理念は、芸術文化・人に出会う喜びや感動がまちの元気につながる「にぎわいの文化交流拠点」。

外観・内観は、紀州の木のぬくもりを感じられる仕上げとしています。

外観は、縦ルーバーとし、古くから和歌山に見られる伝統的な景観を踏襲した木格子をモチーフとしています。また、1階の軒天には、紀州杉である天然木ルーバー、和歌山城の石垣と呼応したタイル仕上げ及び杉板型枠コンクリートの打放し仕上げとしています。

内観は、エントランスホール吹抜け大空間に不燃材料の木リブ、ホールのホワイエの透かし積み壁、ホール内の化粧壁には紀州材を用いており、木の香り漂う仕上げとしています。

 

完成までには様々な物語がありました。

基本構想では、市民の要望に適したホールとするため、文化団体とのワークショップ、文化団体との協議そして説明会を行い、官民一体となって取組みました。

基本設計では、小ホールは平土間の移動客席とした計画から、音響性能を向上させると共に引割幕を設置することで、音楽・講演・式典・小規模な演劇・ダンス等に利用できる固定席のホールに変更をしました。

実施設計では、基本設計を踏襲しつつ詳細設計を進めていきました。その中で和室については、茶道の方々に炉の配置や床の間、水屋について学ばせていただきました。

音響については、基本設計から株式会社 永田音響設計がコンサルティングしています。建築・設備・電気音響・映像・舞台設備などとの関わりと、バランス良い計画・設計として音環境づくりに取組んでいます。

また、大ホールの緞帳は、島精機製作所様から寄附していただきました。プレゼンテーションに立合いした時の感動は、今でも忘れられません。社内のデザイナーを中心に、若手社員がチームを組んでデザインした素敵な緞帳。中央の核となる大木は市民であり、人それぞれが持つ五感(視覚・味覚・聴覚・嗅覚・触覚)をモチーフとしています。また背景には、愛・気・創造という文字が忍ばされています。そして、紀州手毬、和歌山城、和歌山ラーメン等の様々なアイコンが散らばっています。過去から未来へ、人から人への語り継がれていってほしいという思いが込められています。力強く、楽しく、美しく、いつまでも市民に愛され、親しまれ、こころに残る緞帳を大切にしていきたいと思います。

整備中の京橋親水公園から無電柱化しスラローム化する車道と、歩行者を優先した広い歩道のある市道中橋線。ダイワロイネットホテル和歌山から市役所前まで続く、県道より10mセットバックした開放的な城前広場と店舗。それらとの調和として生まれた和歌山城ホール。

これからの和歌山市のにぎわいの拠点となり、人が集い楽しめる核になるものと感じています。

(次号では各室等の詳細について紹介します)

【会報誌きのくにR4年2月号掲載】

【情報・出版委員 森 隆紀】

 

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