和歌山県動物愛護センター/和歌山県鳥獣保護センター

和歌山県動物愛護センター/和歌山県鳥獣保護センター

■  平成12年(2000年)竣工

■  構造 和歌山県動物愛護センター RC造一部S造2階建て

   和歌山県鳥獣保護センター RC造1階建て

■  延床面積 和歌山県動物愛護センター 4101㎡

     和歌山県鳥獣保護センター 542㎡

■  設計 大建設計

■  施工 前田建設工業株式会社

 

雄大な自然に囲まれ、のどかな風景の中を走っていると“とんがり帽子”が飛び出たようなかわいい建物が目に飛び込んできます。今回ご紹介するのは紀美野町にあります和歌山県動物愛護センター・和歌山県鳥獣保護センターです。

平成12年に開館したこの施設は隣接する紀美野町ふれあい公園との位置関係もよくとても賑わっています。

 

さて、この施設がどのように我々の生活と結びついているかご存知でしょうか。動物愛護センターでは犬・猫に特化し、人間との共存を考える上で大切な役割を担う施設となっています。飼育放棄されたり捨てられたりした犬猫の収容、その一部を新しい飼い主に譲渡する事業など様々な取り組みを通して、我々人間と犬・猫との豊かな生活環境を構築する啓発活動を行っています。

 

丘陵地帯の頂上部分に立地する本施設は見渡す限りの緑の山々で囲まれ遠くには和歌山市内を望むことができます。アプローチ沿いに広がる公園では動物に関する楽しい遊具が備え付けられ本施設の雰囲気を誘っています。愛護棟と管理棟に分かれた建物で主に我々が体験するのが愛護棟です。目印となる飛び出た屋根はオリエンテーションホールになり、動物に関する様々な催し事が行われています。中央の展示室では人間との共存をテーマに体験しながら学ぶことのできる展示がなされ子供達にとって格好の学び場となっています。館内は天井窓による自然光の明かり、木質の暖かな雰囲気もあり、とてもぬくもりを感じるインテリアとなっています。屋外に目をやれば“ふれあいドーム”と名付けられた円形の空間が広がりしつけされた小犬とふれあうことができます。一方、管理棟は収容した犬猫を管理する場所で、毛並みを整えるグルーミングを行う施設などがあります。

 

これらの建物から少し離れた場所にあるのが鳥獣保護センターです。こちらは主に野生の傷ついた動物の手当て、保護を行う施設となっています。和歌山県下にはたくさんの自然が広がり、多くの野生動物が暮らしています。不慮の事故で傷ついたカモシカや鳥など、あらゆる動物に対応できる仕組みになっており、フライングゲージや運動場を併設した飼育室もあります。取材当日は動物が居ませんでしたが、できればこちらに運ばれてくる動物が少ない事を祈ります。

 

先にも述べましたが本施設では我々と身近な存在にある犬、猫を中心に共存生活をより豊かにする活動を行っています。ペットブームが叫ばれる中、悲しい運命に巡り会う動物も少なくありません。それは“野良犬・野良猫や捨て犬・捨て猫”と呼ばれるような飼手のいない犬・猫達です。時には人間に危害を加えることや、飼い主が飼育放棄を行うことで保健所からこちらの施設に運ばれ、尊い命を絶つことになります。大変悲しいことです。人間の勝手な行動でそんな運命にある動物が少なくないのも現実です。よって、この施設ではこのような事態を廃絶するために絶え間ない活動を行っています。小学校訪問を通じて子供達に命の尊さを講義したり、動物ふれあい教室を行ったり、収容した犬猫を適正な飼い方をしてくれる新しい飼い主に譲る譲渡事業等々多彩な活動を行っています。おかげで開館当初から数えれば犬の殺処分は1割に減ったそうです。大変すばらしい取り組みであると思います。

 

我々とすぐ近い世界に暮らす動物たち。彼らとの共存はこれまでも、そして未来も人類に課せられた大きな課題です。そのような大きな問題に真正面から取り組む施設が公共施設として存在しているのは全国的にも大変珍しいことだそうで、すばらしい取り組みであると思います。我々建築関係の人間にとってもペット共生する住まいの提案、創造は今後必須かと思われます。ぜひ一度この施設を訪れて犬や猫たちのふるまいを学んで頂けばと思います。

【会報誌きのくにH26年11月号掲載】

 情報・出版委員 東端秀典

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