和歌山県立医科大学 薬学部 伏虎キャンパス

和歌山県立医科大学 薬学部 伏虎キャンパス

【建物概要】

12 北東面鳥瞰■構  造 鉄骨造一部鉄筋コンクリート造

■階  数 北棟:地上5階 南棟:地上11階

                  接続ブリッジ:3階~5階

■建築面積 4,002㎡(付属物含む)

■延床面積 26,305㎡(付属物含む)

■設  計 東畑・山口設計共同体

■監  理 東畑・岡本監理共同体

■施  工 [建築工事]東急・小池特定建設工事共同企業体

      [電気設備工事]栗原・第一電機特定建設工事共同企業体

      [機械設備工事]新菱・長谷川特定建設工事共同企業体

 今回は和歌山市七番丁(伏虎中学校跡地)に新築、今年4月に開学の『和歌山県立医科大学 薬学部 伏虎キャンパス』を紹介します。

 県と市のまちなか大学誘致の取り組みにより、平成30年4月に和歌山市立雄湊小学校跡地に東京医療保健大学和歌山看護学部、平成31年4月に和歌山市立本町小学校跡地に和歌山信愛大学教育学部、令和2年4月に県体力開発センター跡地に宝塚医療大学和歌山保健医療学部、そして今年4月には、旧和歌山市民図書館に和歌山リハビリテーション専門職大学健康科学部と、この和歌山県立医科大学薬学部が開学、和歌山市内に5つの大学の誕生となりました。

 そんな“大学ラッシュ”な和歌山の中でも、この和歌山県立医科大学薬学部(以下、県立医大薬学部と称する)は立地や学生数(100人/学年、6年後には600人)、更に関西地区の公立大学で初の薬学部という点でも、まちへの波及効果が最も期待できる大学と言えるのではないでしょうか。

 建物は南棟(11階建て)と北棟(5階建て)、南棟と北棟を繋ぐ3階~5階建ての接続ブリッジからなり、外壁には押出成形セメント板(ECP)数種、タイル、金属板、アルミスパンドレルと多種類が張られていますが、和歌山城の黒色と白色を基調としているからか、シンプルで知的な印象です。

 エントランスの外壁、エレベーターや階段の壁等、至る所に現れる朝鮮朝顔のオブジェからは、朝鮮朝顔など数種類の薬草を配合し麻酔薬を発明した紀州の偉人・華岡青洲が思い起こされます。

 南棟には実験室や研究室に加え、模擬薬局といった薬学部ならではの部屋もあり、北棟は主に講義室が占めるなか、5階には体育館(アリーナ)が設けられています。接続ブリッジには2層の図書室と、自習はもちろんグループワークにも利用できるラーニングコモンズがあります。

 カフェさながらの家具で居心地良く作業がはかどりそうな空間です。その屋上にはウッドデッキが敷かれ、西面強化ガラスの手すり壁からは紀の川まで一望の、まさしく“まちなかキャンパス”と言えるテラスが広がります。  将来的には北棟1階の食堂の一般利用も予定されています。

 

 また「永くまちに残る建物としてどうあるべきか」将来のメンテナンス工事を見据えたゆとりある機械室、効率的で整然とした配管、板やタイル割付けなど細部の美しさから、設計にも施工にも真摯に取り組まれた姿勢がうかがえます。そして限られた敷地に建つとは言え、ここは大学であり、学生が大学生として勉学に励むことはもちろん、友情を育み、たくさんの経験をする場所です。まちがどう関わり、補いあえるのか。

 市民も一緒に考え育んでいけば、学びの場、学び直しの機会、素晴らしい人材を創出する「まちなかキャンパス」の好例となりえるでしょう。

 

 

【会報誌きのくにR3年9月号掲載】

情報・出版委員 三木早也佳

 

 

このページの上部へ