学童保育「太陽の子」

学童保育「太陽の子」

 

設計 株式会社ジェミニ設計

施工 三陽建設株式会社

竣工 2021年(令和3年)

構造 木造平屋建

建築面積 348.64㎡

 

きのくに公共建築、今回は紀の川市打田にあります学童保育「太陽の子」を特集します。こちらの施設は南に立地する紀の川市立田中小学校の学童保育施設として機能しています。周辺で宅地開発が進むにつれて若い世代の人口が増え近年では珍しく多くの子供達がこの田中小学校に通います。そんな中、活気のある小学生達の放課後の生活を支える重要な施設として本建築は誕生しました。昨今の子育て環境が大きく変化する時代の中で子供達にとっては楽しく友人達と過ごす事が出来ること、保護者のみなさんにとっては安心して子供達を預けることができる、そんな施設になっています。

 

本施設では90名の子供達が在籍しています。授業を終えた子供達は学校を出て、陸橋を渡ってやってきます。南北面に大きく確保された開口部からは周囲を流れる風が漂い、豊かな自然光が降り注ぐ素晴らしい室内環境を形成しています。また、この開口部からは施設内の賑わう様子を垣間見ることも出来ます。

無中空間の続く広い教室では用途に応じて間仕切ることのできる建具が備わっています。ランドセルを各自のロッカーに片付けた子供達はまず湯沸室にあるカウンターに向かうそうです。待望のおやつの時間です。子供のスケールを考慮して計画されたカウンターの上には季節に応じたおやつが用意されるそうです。子供達はまず腹ごしらえをしてからの宿題!となるのでしょうか。室内は全体的に木の温もりを感じることのできるインテリアとなっています。読書の時間を大切にされているとのことでたくさんの本がきれいに並べられていました。子供達が自主的に整理整頓をしているそうです。また、室内にはテレビ等メディアがありません。これには管理運営なさる皆さんの尽力を感じました。筆者も子供を学童に預けて仕事をしており、子供達は時にはアニメや映画などの番組を見て過ごしている様子を知っているからです。子供達は本を読んだり、おもちゃを使って遊んだり、各々が居場所と遊ぶ工夫をして過ごしているそうです。

今回はこちらの建物を設計されました株式会社ジェミニ設計の西根さん(那賀支部所属)の事務所にお伺いさせて頂きましてこの建物に関する話を伺いました。

 

配置計画については道路を挟んで南に位置する田中小学校との間にある陸橋の位置に注意して計画されたそうです。取材の際、この建物はS造で広い室内環境を形成しているのだろうと思いながら西根所長にお話しをうかがうと木造とおっしゃったので驚きました。本建築は2×4を利用しトラスビームを形成することでおよそ木造と思えないような大空間を実現しているそうです。2×4を採用することのメリットは一般木造では不可能な大スパンを実現すことが可能で、しかも基礎は上部構造の荷重の関係から布基礎を使えるのでコストダウンにも大きく繋がるそうです。この話は正に目から鱗でした。木造建築の見直しを求められる昨今、大断面の大きな集成材の梁を使うのでは無く、規則正しくきれいに整列して空間を構成する2×4材の利用には大きな可能性を感じました。

 

子供達を取り巻く環境、子育ての問題、これらの課題に対して建築はどう対峙し、どう解決するか。本建築を通して気付けた気がしました。今後もこのような施設がたくさん増えることを願います。

【会報誌きのくにR6年8月号掲載】

情報・出版委員長 東端秀典

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