岩出市立岩出図書館

岩出市立岩出図書館

■設  計 松田平田設計

■施  工 鴻池組(建物工事)、大林組(造成工事)

■構  造 鉄筋コンクリート造(一部木架構)地上2階

■延床面積 2899.46㎡

■オープン 平成18年(2006年)

IMG_5469岩出市根来地区、豊かな自然に囲まれた岩出市立岩出図書館をご存じでしょうか。隣接するのは根来寺、民族資料館、その先には緑化センター、近畿大学生物理工学部キャンパスへと続く“文化・文教ゾーン”にあります。大門池の中央部を埋め立てた敷地のため建物南側にはデッキ、遊歩道、その先に池が広がり、まるで公園の中のような立地です。タイル張りの落ち着きある外壁に3つの木架構の大屋根がかかるものの高さは抑えられているせいか悠々とした印象で自然の中に溶け込む建築です。

この図書館ができるまでは、岩出駅前ライブラリーや公民館の図書室はありましたが市民からの「本格的な図書館」という強い要望で市制施行と共に誕生し、来春で10年目を迎えます。立地としては市中心部から少し離れているため、自ら徒歩や自転車などで来館できない子どもやお年寄り対しては様々な配慮がなされています。この岩出図書館本館と駅前ライブラリー、総合保健福祉センター、中央公民館、上岩出地区公民館の図書室計5ヶ所への配本サービス(図書の予約、受取)、自習室の設置(本館では禁止のため図書室で可能に)や学校図書と連携した地域密着の図書館ネットワークシステムは開館当時から開始されています。

 

IMG_5402内部のレイアウトは明快かつ合理的で、建物中央にサービスカウンターがあり、南側に児童図書と一般図書コーナーがあります。一般図書コーナーに迫る面積の児童図書コーナーは楽しい壁面かざりや特集本棚、点字本の児童書があることなど、この図書館の特徴の一つになっている充実ぶりです。高さのある天井には杉板が張られ紀州材の梁が架かり、木のぬくもりが感じられます。館内奥まで差し込む陽は温かさと明るさをもたらしとても気持ちの良い空間となっています。

「図書館」とはこういうもの、こうあるべき、とは言い切れない昨今、どのような図書館が正解とも言えない。建築物として素晴らしいことと地域や運営に合っていることももちろん別の話で、大切なことは基本方針が何で、それに沿った運営と建築であることではないだろうか。この岩出市図書館の基本方針は①暮らし中の図書館②生涯学習を支援する図書館③親と子どものふれあい図書館④人にやさしい図書館、と示されています。配本サービスや貴重本や郷土資料など図書館ならではの蔵書から①、DVDやCD更に複製画まで貸出可という幅広い学習素材、司書によるレファレンスサービスから②、充実の児童書コーナーと定期的な読み聞かせ等のイベント開催など③、充実の大活字本やバリアフリー建築に④の基本方針を見受けることができました。来年10年目、一つの節目を迎えられますが今後も地域に愛され多くの市民のためになる図書館であってほしいと思います。

【会報紙きのくにH27年12月号掲載】

【会報紙きのくにH27年12月号掲載】

情報・出版委員会 三木早也佳

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