広川町観光・地域交流センター いなむらの杜
広川町観光・地域交流センター いなむらの杜
【建物概要】
■構造・規模 木造 平屋建て、一部RC造 2階建て
■建築面積 914.41㎡
■延床面積 978.68㎡
■設計・監理 株式会社 川建築事務所
■施工 株式会社 淺川組
今回は広川町にある『広川町観光・地域交流センター いなむらの杜』を紹介します。広川町の観光・地域交流拠点の一つとして整備され、今年4月にオープンしました。
広川町は「百世の安堵」~津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産~のストーリーにて、日本遺産に認定されています。同じく日本遺産に登録されている湯浅町と共に、2つの日本遺産ストーリーを巡るまち歩きのルート上に、観光と地域交流の拠点として、建設されています。
近くには、国の重要文化財を持つ、廣八幡宮があり、秋に行われる「稲むらの火祭り」では、松明を手に多くの人々が、廣八幡宮まで行進するルート上でもあります。施設内には、観光案内や地元文化ギャラリー、地域文化伝統資料コーナーやカフェスペースがあり、観光客が立ち寄り、休憩したり、広川町の文化にふれる事ができます。また多目的ホールやおはなし交流スペース、梧陵交流スペースでは、グループ活動や幅広い年代の交流が可能となっています。また図書コーナーも充実しています。
観光ルートを通って敷地に近づいてくると、とてもシンプルで、整ったボリュームが見えてきます。建物正面は、ガラス張りのカーテンウォールになっていて、シンプルで美しい形態となっています。3つのボリュームに分けられた建物は、統一感を持ってデザインされています。建物の構造は、木造平屋部分と鉄筋コンクリート造2階建て部分とに分けられますが、異なる構造体・階数である事を感じさせないデザインとなっています。ガラス越しに、室内の様子が屋外からでも見通す事ができます。室内の木造の骨組みが、来館者を優しく室内に導いてくれます。
風除室を抜け室内に入ると、吹き抜けの広々とした空間となっています。外観をシンプルに構成していた、正面のカーテンウォールから入るやわらかい光で、室内全体が明るく、紀州材の柱・梁、小屋組みなどの木造の骨組みが、とても美しく見えます。構造体には杉が使用されていて、力強く天井まで伸びる柱がとても印象的です。6mを超える天井高さでありながら、水平な梁その上に組まれた小屋組みを見せる事で、まるで明るい森の中にいるような、心安らぐ落ち着いた空間となっています。エントランスに印象的に配置された丸柱は、「百年桧」という樹齢100年以上の桧材で、この施設建設のために、広川町内の山林から伐採された木材が使用されています。
鉄筋コンクリート造2階建ての部分は書庫となっており、多くの書籍を収蔵しています。空調設備の整った書庫には、将来的には古文書などの貴重な書物・資料等を収納する事も可能となっています。
ゆったりとした交流スペースがあることで、地域の人々同士のコミュニケーションが活発になっているそうです。コロナ禍で、地域外の人々との交流が難しい時期ですが、今後は世界中の人達が、この場所を訪れ、地域の方々とコミュニケーションを活発に行うことで、世界とつながる交流拠点施設となっていくと感じました。
【会報誌きのくにR3年7月号掲載】
情報・出版委員 佐原光治