新宮市役所 新庁舎
新宮市役所 新庁舎
建物概要
構造規模 鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造) 基礎免震構造 7階建て
敷地面積 4341㎡
延床面積 6823㎡
施工 建築 東洋・海邊特定建設工事共同企業体
電気 永野・共栄特定建設工事共同企業体
機械 ツジヤ・マエダ・協和特定建設工事共同企業体
竣工 平成29年3月
今回は和歌山県新宮市にできました「新宮市役所新庁舎」をご紹介します。
旧庁舎は昭和38年に建設されて以来、50年余り新宮市の機能を果たしていました。新宮市の規模が大きくなるにつれ旧庁舎だけでは行政サービスがスムーズにいかなくなり増築を繰り返し別館5棟にもなりました。そのため市民の皆様には不便をかけるとともに外部面でのバリアフリーができておらずご迷惑をかけていたこと、旧庁舎では電力が足りない、職員の作業移動が大変だということ、また平成7年1月に起きました阪神淡路大震災をうけ、新宮市も旧庁舎の耐震診断を平成8年10月に実施したところ耐震指標が0.1という驚きの結果が出ました。このままでは地震が発生すれば瞬く間に倒壊し新宮市としての機能が失われるということで平成20年、新宮市長期総合計画を策定しました。
このような中、平成24年3月東日本大震災、9月紀伊半島大水害の発生により、災害時に地域の復旧・復興の活動拠点となる庁舎の重要性が再討議された。
この時にできたコンセプトが
① 市民を守るための安心・安全な庁舎
大地震に対して高い安全性と耐久性に優れた免震構造を採用し、災害対策本部として必要な防災情報システムや情報通信設備の設置
② わかりやすく親しまれる庁舎
市民に分かりやすい部署の配置と案内表示を配置
1階にはギャラリーを設け、皆様が気軽に利用できる交流スペースとして、まちづくりに関する情報提示や市の産業、観光、歴史などを紹介するスペースを配置
③ ユニバ―サルデサイン
車いすに対応したローカウンターを配置。また1階にはオストメイト対応の多目的トイレの配置
磁気誘導ループシステムを設置し、広い空間や周囲の騒音が大きい場所でも、遠く離れたところからの声や音を聞き取ることのできる仕組みを導入
④ 地球にやさしく、経済的な庁舎
空調負荷の低減のため。地中熱設備を導入
地下に貯留された雨水を利用し、植栽への散水やトイレ洗浄水として利用
維持管理費を抑えるため、総合的な省エネルギー対策のシステムを導入
高度情報通信機器の導入にも備え、床を二重構造にしたフリーアクセスフロアを採用
⑤ 議会活動を推進する場
誰もが見やすく、聞きやすく、出入りしやすい傍聴席を配置
本会議の様子をモニター中継したり、インターネット配信するなど、市民が気軽に傍聴できる仕組みを構築
この5つの柱をコンセプトとすると共に市長は機能的な事務所ビル、職員の作業のしやすい環境設備などを掲げ平成29年3月に完成しました。
コンセプトにありました維持管理費を抑えるため、雨水を利用することにより水道代が大幅に削減。外部面ですが全体写真でもわかりますように、全ての階にベランダが1周されています。これは災害時、新宮市を360°目視にて管理できるというメリットと共に、20年~30年後の改修時にベランダからの作業になるため、仮設費等の削減につながるというメリットがあるとのことです。また大きい施設では県内初の地中熱の利用により電力消費量などの削減が可能とのことです。
災害用としましては、飲料用水槽が地震時、遮断壁が降り、約1万人の飲料水が確保できるようになっています。
取材の中で、一番大変だったことは?と質問しますと、色々ありましたが、やはり引っ越しが大変だったとの事。新庁舎への引っ越しは一部業者に任せましたが、仮庁舎への引っ越しの時は、職員の力ですべてしましたと。その時は非常に大変だったが、職員が1つになれたこと、職員のマンパワーを感じたので逆に良かったです、とお言葉いただきました。
いつくるかわからない東南海地震、またくるかもしれない集中豪雨、いろんな災害に対して準備が必要です。また災害が起こった時、やはり最後は人間の力・マンパワーが必要ではないでしょうか。新庁舎で一つになった新宮市は、見本となるのではないでしょうか。
【会報誌きのくにH30年9月号掲載】
情報・出版委員 仮屋 亘・亀山