有田市民会館
有田市民会館
■構造・規模 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造 4階建て
■建築面積 2,458.26㎡
■延床面積 4,343.77㎡
■設計監理 徳岡設計・アール企画・Spazio設計共同企業体
■施工 淺川・三谷特定建設工事共同企業体
今回は有田市にある『有田市民会館』を紹介します。有田市役所、有田市消防庁舎などが建ち並ぶ、市の中心地にあります。市役所・消防庁舎が南側に流れる有田川の方向に建物を開いているのに対して、市民会館は北側に向いて開いています。開く方向が異なる3つの公共建築が集合することで、360度市民に開かれた有田市の中心が形成されている様に感じました。北側にはJR箕島駅や、ショッピングセンターがあります。敷地北側の幹線道路から施設エントランスまでは、長いアプローチ空間があり、駐車場としてだけでなく、公園的な広場として、市民に開放されています。アプローチから見える壁面は、1階・2階共、ガラス面となっていて、外からでも内部の様子を見ることができます。ガラスの壁面は、緩やかな曲面となっていて、建物全体にやわらかなイメージを与えています。建物西面は隣接する箕島中学校のグランドに面しています。壁面は特徴的なルーバーでデザインされていて、この建物を特徴づけるデザインの一つとなっています。
建物内に入ると、エントランスホールやホワイエは、紀州材を多く使用した内装になっていて、とても落ち着いた空間となっています。1階はホール客席やバックヤード、事務室が配置され、2階には図書館が併設されています。ホールと図書館という異なる用途を巧みにレイアウトし、無駄なスペースを極力なくしたプランニングになっています。ホワイエにはギャラリースペースや、休憩スペースがあります。ホールが使用されていないときでも、市民の休憩スペースや、語らいの場として、開放されています。ホールの収容人数は約700人で、ホールの内部の客席は、みかん山を連想させる配色となっていて、座席もゆったりと確保されています。座席の一番後方には、ガラス張りの親子ルームが設置されていて、小さな子ども連れの来場者にも配慮したプランニングとなっています。1階が紀州材を使った落ち着いた内装に対して、2階の図書館はとても明るく、開放感のある空間となっています。北面のガラス面からのやわらかな採光だけでなく、天井面からも自然光を取り入れています。子どもが楽しく絵本を読める「わくわくのもり」というスペースや、北側の開けた風景を眺めながら、ゆったりと読書できるスペース、読書に集中できる静かなスペースなど、大人から子どもまで、それぞれの利用目的に合った読書の時間を楽しめる空間となっています。
【会報誌きのくにH30年8月号掲載】
有田支部 佐原光治