有田市立有和中学校
【建物概要】
建築面積:5,207.91㎡
延床面積:14,318.16㎡
■構造・規模
教室棟:鉄筋コンクリート造 4階建て
メディアセンター:鉄筋コンクリート造2階建て
体育館棟:鉄骨造 地上5階建て
■設計・監理:隈研吾・二本柳慶一設計共同企業体
■施工:清水・初島・桑原特定建設工事共同企業体
わかやまの公共建築9月号、10月号は有田市立有和中学校を紹介します。敷地は市内を流れる有田川の北岸、市役所、消防署、市民会館・図書館などが集まる市の中心地にあります。生徒数の減少に伴い、平成29年に「有田市学校規模適正化検討委員会」を設置し、有田市内にある4つの中学校を1つにし、統合中学校を建設する議論を重ねてきました。平成30年に敷地を箕島中学校とすることが決定し、令和2年に設計プロポーザルを実施し設計者を選定。令和5年に工事完成。令和6年4月から市内のすべての中学校を統合し、有田市立有和中学校として開校しました。
校舎は3つの棟から構成されています。「地域に開かれた学校」をコンセプトに建物を3つの棟に分割して配置。北側道路から地域施設をつなぐ「地域交流と生徒交流のみち」、みかん畑と有田川の「景観をつなぐみち」を配置し、周辺地域や隣接する有田市民会館・図書館とつなげていくことで、学校を地域に開いています。3つの棟に分割し、地域のみかん畑の山並みに配慮した屋根の形状とすることで、約14,300㎡の大きなボリュームでありながら、どこから見ても威圧感や圧迫感の無い、地域と調和するヒューマンスケールな学校となっています。校舎敷地南側の有田川の堤防からは、校舎内やグラウンドでの日々の生徒たちの学習の様子を見通すことができます。動線的にも視覚的にも地域に開かれた学校となっています。
敷地北側の正門から敷地内に入っていきます。アプローチ空間は広々としており、学校に入っていくというよりは、公園に入っていくような感覚になります。左手に校舎棟とメディアセンター、右手に体育館棟があり、校舎棟と体育館棟の間の「有和ゲート」を超えた先にグラウンドがあります。「有和ゲート」は校舎棟と体育館棟をつなぐ大階段の下のゲート的な空間で、昇降口へのアプローチとなっています。「有和ゲート」廻りの外壁や軒天には木製のルーバーが設置されていて、とても印象的な空間となっています。体育館棟の1階は広々としたピロティとなっており、駐輪場となっています。校舎棟とメディアセンターの間は中庭のような空間となっていて、有田市民会館・図書館とつながっていきます。3つの棟と「有和ゲート」「地域交流と生徒交流のみち」、「景観をつなぐみち」がつくる地域に開かれたのびやかな屋外空間は、都市の中の広場的な空間のような、それでいておおらかな公園のような空間でもあります。ダイナミックな建築でありながら、周辺地域に配慮されたボリュームを持つ、ヒューマンスケールな学校建築だと感じました。次回は建物内を中心に紹介していきます。
【会報誌きのくにR6年9月号掲載】
情報・出版委員 佐原光治