有田市立有和中学校(続き)
有田市立有和中学校(続き)
■敷地面積:25,732.73㎡
建築面積:5,207.91㎡
延床面積:14,330.82㎡
■構造・規模
教室棟:鉄筋コンクリート造 4階建て
メディアセンター:鉄筋コンクリート造 2階建て
体育館棟:鉄骨造 地上5階建て
■設計・監理:隈研吾・二本柳慶一設計共同企業体
■施工:清水・初島・桑原特定建設工事共同企業体
前回に続き、有田市立有和中学校を紹介します。外壁や軒天に木製のルーバーが設置された印象的な空間「有和ゲート」をくぐり、昇降口に進みます。昇降口を入ると校舎棟2階へと続く大階段が見えてきます。校舎棟2階へと続く大階段の壁面は、みかんの皮を練り込んだみかん色の塗り壁となっています。校舎棟は4階建てで、中央には多目的に利用可能な広々としたオープンスペースがあり、その南側に普通教室、北側に会議室や理科室が配置されています。オープンスペースは生徒同士や教員とのコミュニケーションの場として、多様な学びのスタイルを可能としています。生徒トイレ前にはみかんをモチーフとした大きな円形の洗面ボールが配置されています。腰部分はみかんの皮を練り込んだ左官材で仕上げられています。丸い形とすることで、生徒たちの交流の場の一つとなっています。
普通教室南側には広々としたテラスがあり、有田川を一望できる素晴らしい景観が広がります。校舎棟からメディアセンターへは2階渡り廊下を通り、アクセスします。メディアセンターは2階建てで、地域に開放することが可能なように計画されています。図書室や調理室、被服室、技術室、美術室、音楽室が配置されています。校舎棟から体育館棟に移動します。体育館棟は5階建てで、1階はピロティ・昇降口、2階が体育館アリーナで吹き抜け、4階が体育館アリーナ吹き抜けと部分的に卓球場、5階は武道場となっています。体育館棟は社会体育としての夜間利用や災害時の避難所となっているため、アプローチは大きく2方向あります。一つ目は昇降口を入り室内からエレベーターや屋内階段を使用する方法。2つ目は校舎棟から2階ホワイエや3階「やまのテラス」からアプローチする方法です。災害時の避難所となる体育館アリーナ部分は東南海地震の津波発生時、最上階の武道場は有田川の水害発生時にも浸水しない高さとなっています。普通教室同様、南に面した大きな開口部からは有田川を一望できます。体育館はバレーボールコート3面がとれる広さ、武道場は柔道・剣道・空手が同時にできます。また、トイレや器具庫はもちろん、部室も併設されています。武道場の天井は躯体の骨組みや空調機械・ダクトが現しとなっていて、機械的な美しさを感じます。屋内外共にダイナミックな建築・空間でありながら、地域の環境に溶け込み、親しみを感じることのできるヒューマンスケールな有和中学校は、生徒たちの自慢の校舎となっています。生徒たちはここで学び・育つことで感性を豊かにし、大人になっても有和中学校の卒業生であることを誇りに思うことができる、素晴らしい学校だと感じました。
【会報誌きのくにR6年10月号掲載】
情報・出版委員 佐原光治