田辺市立武道館・植芝盛平記念館
田辺市立武道館・植芝盛平記念館
建物概要 設 計 株式会社 岡本設計
監 理 株式会社 川建築事務所
構造規模 RC造 3階建て
延床面積 3462.98㎡
施 工 建築工事 田中・テンコー特定建設工事共同企業体
電気設備工事 株式会社 光明電設
機械設備工事 株式会社 第一テック
周辺整備工事 株式会社 田中組
今回は田辺市にある「田辺市立武道館・植芝盛平記念館」を紹介します。JR紀伊田辺駅を出てまっすぐ海に向かって歩くこと10分、扇を広げたようななだらかな砂浜や市民の憩いの場である扇ヶ浜公園があります。そこに令和2年10月に、植芝盛平記念館を併設した田辺市立武道館が開館しました。
以前までの武道館は、田辺市目良にあり昭和46年の黒潮国体に合わせて建設され、地域の武道場として市民の皆さんに親しまれてきましたが、老朽化に伴い建て替えになりました。
この新武道館は、長大スパンを可能にするポストテンション方式プレストレスト工法が採用されています。ポストテンション方式プレストレスト工法とは、現場打ちの梁にセットされたシース管内にPC鋼材を挿入し、コンクリート強度発現後に、PC鋼材をジャッキにより緊張してプレストレスを導入する工法です。この工法により、ピロティやサブアリーナなどにおいて長大スパン構造が可能になり採用となりました。
新武道館は、剣道・柔道・合気道・空手・少林寺拳法等の各練習場として快適に利用できる設備を備えるだけでなく、大会誘致などもできるような設備が充実しています。具体的には、近畿大会規模の大会を招致できるようメインアリーナは512畳相当あり競技面を4面確保し、さらに観覧席は530席・本部放送室・サブアリーナ(98畳)等も設けています。
また、田辺市上の山で生まれた、合気道開祖 植芝盛平翁。田辺市では、郷土の偉人である盛平翁の偉大な足跡と功績をたたえ、永く後世に伝承するため、武道館に植芝盛平記念館を併設しています。記念館では、盛平翁の生涯や合気道の沿革を紹介するグラフィックパネル、合気道の和合の精神を表した気・心・体サークル、合気道の基本動作を学ぶことのできる合気道体験映像、盛平翁ゆかりの品展示コーナーを設置し、合気道経験者だけでなく、合気道未経験の方にも盛平翁や合気道の魅力を感じていただける施設となっています。
さらに、南海トラフ巨大地震による津波の想定高さ4.7メートルを考慮して、2階床面の高さを5.1メートルとしています。1階は公園の一部として利用できるよう、かつ津波が発生した際には、波が抜けていくようなピロティ構造、外階段では3階まで上がれるようにし一時避難場所として考えられています。
新武道館は、田辺スポーツパークと併せてスポーツ合宿を受け入れる「スポーツのまち田辺」をPRするとともに、和歌山県の朝日・夕日100選に選定された扇ヶ浜の海を一望できるテラスもあり、武道関係者だけでなく、市民や観光客なども利用する新たな観光スポットとして市街地活性化のきっかけとして期待されています。
【会報誌きのくにR3年4月号掲載】
情報・出版委員 亀山 忍