紀の川市民体育館
-紀の川市民体育館-
【建築概要】
■構造・規模 鉄筋コンクリート造
(一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造)
■延床 面積 7,017.32㎡
■階 数 地上2階 地下1階(受水槽室)
■設計 監理 株式会社久米設計 大阪支社
■施 工 株式会社奥村組 関西支店
■工 期 平成25年9月~平成27年3月
今回は「紀の川市民体育館」を紹介します。
元々あった旧打田体育館は老朽化や耐震性能に課題があり、また平成27年度に「紀の国わかやま国体」の開催が控えていたため、「紀の川市民体育館」へ建て替えることになりました。
旧打田町の県道14号線(和歌山打田線)を紀の川に向かって少し下った堤防沿いにあります。体育館の近くには若もの広場(グラウンド)やプール、テニスコート、ゲートボール場等があります。
体育館の特徴として、一つ目は「紀の川市を元気にする多目的体育館」ということで、敷地南東にある「緑の丘」と建物の2階にある「丘テラス」により周辺環境と繋げ、総合スポーツ公園の拠点を形成しています。メインアリーナ(36m×57m)はバスケットボールコートが3面とれ、音響設計・計画をもとに音響設備・舞台照明を設置し、各種イベントが行なえます。2階にはアリーナ・観覧席を囲むようにランニングコースが配置されています。1階トイレには、男子トイレと女子トイレの間仕切りを可動式することにより、男女比率の違う様々な競技からレクリエーションにまで対応できます。また、昇降機等を設置し、高齢者から乳幼児まで、全ての世代の市民が利用できるユニバーサルデザインの施設となっています。
二つ目として「紀の川の自然と調和する環境共生型アリーナ」ということで、「緑の丘」とそれに浮かぶ大屋根の組み合わせにより、総合スポーツ公園の新シンボルとして、周囲の自然と調和した柔らかな外観を創り出しています。どの方角から観ても洗練されていて、一見「体育館」とは思えない外観、細やかな施工が現場の苦労を伺い知ることができます。また、共用部には地中熱で予熱・予冷された空気を供給する「アースチューブ」という設備や、職員さんの間で「風の道」と呼ばれている高低差と建物の形状を利用した換気経路や、雨水の利用など積極的に自然エネルギーを利用しています。また、建設計画当時は出初めであった高効率LEDを採用して省エネルギーの工夫もなされています。
三つ目は「紀の川市民の安全安心を守る防災拠点」として、災害時の避難場所として利用できるよう建物の耐震性や耐風性が確保されています。また、ライフラインが途絶した場合でも、避難者に対し給水(飲用水・雑用水)で3日分、LPG・排水で7日分の供給が可能で、「緑の丘」、屋外トイレ付近にはマンホールトイレ、「丘テラス」には炊き出しスペースが設営できるよう設備配管を完備し、さらに、停電対策として非常用発電機と3日分の燃料を貯蔵し、様々な物資や消耗品が保管できる備蓄庫も備わっています。
取材当日は建設を担当された職員さんと現在、施設を管理されている職員さんのお二方にお話を聞くことができ、ランニングコースの照明は走っていて飽きないよう、照明がランダムに配置されている等、建設当時のアイデアや思い等が現在どのように活用され、また市民にどのように利用されているか、答え合わせ的なお話をお聞きすることができ、有意義な見学・取材ができました。今回の見学・取材にあたり、紀の川市の職員の皆様にはご面倒な事にもかかわらず快く対応して頂き感謝致します。ありがとうございました。
【会報誌きのくにH30年11月号掲載】
情報・出版委員会 堀内 弘樹