紀の川市立荒川中学校

-紀の川市立荒川中学校-

外観②【建築概要】

■構造・規模  鉄筋コンクリート造

■延床 面積  6489.58㎡(内、新校舎棟分4249.92㎡)

■階   数  地上3階 地下ピット(雨水貯水槽)

■設計 監理  株式会社岡本設計

■施   工  株式会社小池組

■工   期  平成30年7月~令和2年3月

 今回は「紀の川市立荒川中学校」を紹介します。

 1969年(昭和44年)に建設された旧校舎が築後50年を経て雨水の排水処理の不具合など、施設の老朽化が進んでいたことから、次世代の学習環境に対応していくことを目的に建て替えることとなりました。また、災害時には地域の避難所にもなることから、紀の川市として「安全で安心な学校づくり」の取り組みの中での改築事業であります。

 荒川中学校は「あら川の桃」で有名な紀の川市桃山町に位置し、新校舎は敷地の中央に建設され、北側に渡り廊下でつながる体育館棟、東側に駐車場・ハンドボールコート、南側に駐輪場・テニスコート、西側に150mトラックが入るグランドあります。

 外観はやわらかな白と木質系のルーバーを基調とした縦のラインと、水平ラインは「紀の川」の流れをイメージしたという淡い印象的な青色が使われており、桃の花をモチーフにした校章が設置されています。

 校舎棟の中央には「光庭」と名付けられた吹き抜けスペースがあり、回遊できるロの字型の配置で、窓やドアから光が差し込み、廊下や北側にある教室の採光に役立ち、また、開け放つと新鮮な空気が入り、校舎全体へ心地よい風が通る工夫がされています。1階には昇降口・職員室・校長室・3年生の普通教室等が配置され、普通教室の床には紀州杉、廊下や腰壁には紀州桧が使用され、木の香りが漂い、明るく温もりのある空間になっています。2階には多目的教室・図書室・2年生普通教室があります。新校舎のシンボルでもある図書室は2階・3階の吹き抜け空間になっており、南側の大きな窓からは光が注ぎ、内装の壁は木質系の仕上げ材を使い、家具・本棚も木質系にすることで木の温かさに包まれながら読書を楽しめる空間になっています。北側には家庭科室があり、多くの場合、調理実習のための家庭科室と被服室の2教室は必要になりますが、稼働率を上げるために家具の配置や運用の工夫により、両方の用途を兼用した教室とし、面積的にもコンパクトにまとめたそうです。3階には音楽室・美術室・コンピューター室・1年生普通教室等が配置されています。各階の階段の壁・トイレの間仕切りは、赤・青・黄色・緑などの色とりどりのガラスブロックが使われ、生徒の方々にとっても視覚的にも明るく、楽しく、癒しの空間になっています。

 また、紀の川市が推進している環境教育の取り組みとして、屋上に10kw相当の太陽光発電設備を設置し、新校舎で必要な電気の一部を賄っています。他にも地下には雨水貯水槽を備え、貯めた雨水をトイレの洗浄水として利用しています。いずれも環境負荷の低減を図るだけでなく、生徒のために「生きた教材」として新校舎を活用することで次の世代の子どもたちに環境問題は身近で重要であるいう意識をもってもらう役割を担っている校舎となっています。

 

【会報誌きのくにR3年6月号掲載】

情報・出版委員会 堀内弘樹

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