紀美野町立みさと天文台

紀美野町立みさと天文台

■既存建築 平成7年7月7日竣工

みさと天文台_002_w設計:上田篤都市建築研究所

施工:株式会社竹中工務店

 

■増改築工事 令和3年7月7日竣工

設計:一級建築士事務所 有限会社ディー・アーキテクツ

    アストロ光学工業株式会社

   株式会社岡本設計

施工:株式会社小池組、株式会社藤平組

構造規模:RC造及びW造 地下1階 地上3階

 

■延床面積:既存建築・天文台(星の塔)278.15㎡ 、総合案内施設(月の館) 233.52㎡

増築工事・プラネタリウム棟(宙の学舎)149.45㎡

 

今回は紀美野町の『みさと天文台』をご紹介致します。

松ケ峯を目指し対向車に怯えながら細い山道を登って行くとその先の開けた高台に、みさと天文台があります。

 

平成7年7月7日7時7分7秒に、天文台(星の塔)・総合案内施設(月の館)が竣工し、およそ30年の時を経て、この夏新たにプラネタリウム塔(宙の学舎)と45mにも及ぶ大型星空展望デッキが生まれました。

 

銀色に統一された外観には秘密基地の様な魅力が溢れ、一気に童心へと心は引き戻されます。

一際高い星の塔、その横には電波望遠鏡。こんなのってヤンチャ坊主(年齢問わず)の大好きアイテム詰め合わせセット以外の何物でもありません。

それに加えて南側斜面には45mにも及ぶ大型星空展望デッキが張り出しており、ロマンチック少女(年齢問わず)にとっても魅力十分な欲張りセットです。

そんなサイエンティフィックな第一印象とは真逆に、総合案内施設の月の館に入ると、その中は木組みを生かした暖かい構造と内装。ギャップの大きさに益々、引き込まれて行きます。

この、みさと天文台には様々な仕掛けが施されています。

夜の45m大型星空展望デッキと空の庭全面に映し出される『南天の星空(地面で隠れている星空)』(リアル星空との競演プラネタリウム:設計・製作:和歌山大学 天野研究室)や、天体観測ドームの内側に投影される星空、椅子の無いプラネタリウム投影室など【天気が悪くても楽しめる】【待たせない】【飽きさせない】【退屈させない】工夫が随所に散りばめられ、入場してから帰路に就くまで時間というものを忘れてしまいます。

天文台と言えば望遠鏡。ここに設置されている口径105㎝の大型望遠鏡は、平成7年7月7日世界時7時(日本では午後4時)のオープン当時は一般公開されている天文台では日本一の望遠鏡で、現在でも和歌山県下最大・全国8位を誇ります。何より凄いのは、日本一の”巧の技”で磨き上げられた【苗村鏡】と呼ばれる貴重な超高精度反射鏡が使われている事。世界最高レベル(10万分の1mm)の精度を持つ苗村鏡に限ると、口径1mを超えるものは国内で二つしかありません。

そんな素晴らしい施設・設備を兼ね備えながら山内千里天文台長は『皆様が期待される満天の星空は、望遠鏡で見るものでは無く眼で見るもの』と仰います。

確かに、望遠鏡では「土星」や「月」が拡大されて見える事を私達は知っていますが、覗いて見える視界は夜空のほんの一角で、望遠鏡では星がポツンと見えるものである事を忘れてしまっています。多くの方々が期待される「満天の星空」は望遠鏡ではなく、自然環境だけに依存する事に気づかされ、納得しました。そう、みさと天文台の本質的な良さは自然環境だったのです。市街では夜の灯りにかき消されてしまっている夜空を横切る天の川が、ここでは肉眼で普通に見えるのです。

そんな豊かな自然に溶け込むようにデザインされた建築物によって、この場所がいっそう魅力を増しているのです。

プラネタリウムで見せていただきましたが、映像でも十分に美しい星空が目の前に有る迫力は最高の観光資源・財産。皆さんにも是非、足を運んで貰って自分の目で見て頂ければと思います。

星の塔を下から見上げ、月の館の木組みを見上げ、プラネタリウムを寝転んで見上げ、大型望遠鏡と天体観測ドームを見上げる首が疲れる取材でしたが、何を見ても『おぉ~♪』と嘆息してしまう充実空間でした。

みさと天文台は現在、コロナウイルス感染症対策のため予約無しでの入場はできなくなっています。

また、臨時休館となっている場合も有りますので訪問の際には公式Webサイト(www.obs.jp)

で事前に状況を御確認下さい。

天文台の下には宿泊可能なバンガローが三棟、併設されています。ログハウス調で広いウッドデッキを備えた星空観賞にピッタリな建物です。是非、ご利用下さい。

【会報誌きのくにR3年10月号掲載】

情報・出版委員 大川嗣久

 

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